階段の秘密「なぜか上りたくなるデザインの心理学」

階段の秘密「なぜか上りたくなるデザインの心理学」 おもしろ階段
おもしろ階段

なぜか上りたくなる階段、ありませんか?その秘密はデザインに。階段が心理や行動に与える影響、心地よさや安心感を生む理由をこの記事で解き明かします。

階段は無意識の行動を心理的にデザインしています

私たちの行動は、実は階段のデザインによって巧みに導かれています。

なぜ特定の階段は自然と足が向き、上ってみたくなるのでしょうか。それは、視線の先に広がる空間への期待感や、明るさ、開放感といった要素が、私たちの無意識に「進んでみたい」という気持ちを起こさせるからです。
例えば、商業施設で少し幅が広く、明るく照らされた階段は、単に移動するためだけでなく、何か新しい発見があるかもしれないというワクワク感を演出します。


このように、計算されたデザインは、人の流れをスムーズにし、空間全体の印象を豊かにする力を持っています。まずは、階段が単なる上下移動の装置ではなく、私たちの心理に働きかけるデザイン要素である、という視点を持ってみましょう。

心地よいリズムと階段の素材感(デザイン)が歩行体験を変えます

階段を上り下りする際の心地よさは、ステップのリズムと素材感によって大きく左右されます。

具体的には、蹴上げ(一段の高さ)と踏面(足を乗せる面の奥行き)のバランスが重要です。このバランスが適切だと、人は自然でリズミカルな歩行ができ、疲れを感じにくくなります。 建築基準法で最低限の寸法は定められていますが、「心地よい」と感じる寸法は、使う人の身体感覚や心理的な感覚に寄り添うことで生まれます。

さらに、足裏で感じる素材感も大切です。木の階段が持つ温かみや柔らかさ、石材の持つ重厚感やひんやりとした感触、カーペットの吸音性や高級感など、素材は歩行感だけでなく、空間全体の雰囲気や音環境にも影響を与え、私たちの体験を豊かにしてくれます。

階段の踊り場と手すりは心理的な安心感の鍵です

踊り場や手すりは、階段の安全性を高めるだけでなく、私たちの心理に作用する重要なデザイン要素です。

踊り場は、単に方向転換や休憩のためだけではありません。視界が開けたり、空間に変化が生まれたりすることで、単調になりがちな昇降にリズムを与え、心理的な区切りや安らぎをもたらします。 また、手すりのデザインも奥が深いです。その太さや形状、素材は、掴みやすさという機能面はもちろんのこと、空間に軽やかさや重厚感を与える視覚的な効果も持っています。手すりの始まりと終わりのデザインを工夫することで、利用者を自然に階段へと導くサインにもなり得ます。

このように、踊り場や手すりは、物理的な安全性と心理的な安心感の両方を満たすことで、階段全体の質を高めているのです。

まとめ

今回は、階段のデザインが私たちの心理や行動にどのように影響を与えているか、3つの視点から見てきました。視線の誘導や空間演出による無意識への働きかけ、蹴上げと踏面のバランスや素材感がもたらす心地よさ、そして踊り場や手すりがもたらす心理的な区切りと安心感。

この記事をきっかけに、ぜひ身の回りの階段を少し注意深く観察してみてください。きっとそこには、設計者の意図や、空間をより豊かにするためのデザインのヒントが隠されているはずです。

この記事を書いた人
福田 達也

はじめまして、『階段輪舞』のサイト管理者の福田 達也と申します。
私は建築士として20年以上の経験を持ち、階段に関する専門知識や技術を学んできました。
階段は建物の中で重要な役割を果たすだけでなく、美しく機能的な空間を作り出すことができると思っています。
このサイトでは、階段に関する様々な情報や美しく機能的にするコツを分かりやすくお伝えしていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。

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